2015年10月24日土曜日

敵と寝る女

「誰も知らなかったココ・シャネル」
ハル・ヴォーン著
赤根洋子 訳
文藝春秋 2012年
を読みました。

この本を読んだら最後、その後、
ありがたがって、シャネルマークの入ったバッグを持つ気は失せます。

ジャーナリストが書いたこの本では、
シャネルの生い立ちから始まって、
あまりに多くの男性遍歴、
そしてこの本の主要なテーマである、
シャネルがコードネーム「ウエストミンスター」というナチスのスパイであり、
戦後、対独協力者として逮捕され、裁判にかけられるも、
チャーチルに頼んで、罪に問われなかったという事実が、
数々の証拠文書によって明らかにされていきます。

もともとシャネルはユダヤ人排斥主義のレイシストであり、
自分の利益のためなら、男と関係を持つこともいとわない性格で、
ナチスのスパイになったのも、自分の甥を助けるため、
そして、自分の香水事業の利益を取り戻すためという、
フェアという言葉からはほど遠い、
真っ黒な経歴の人物です。

しかし、付き合った男性が羅列されているんですけれども、
真剣だったら、こんな数をこなすことができるとは思えない。
同時進行もたくさんあります。
ですから、その多くは自分の利益、利潤を追求するためのものであり、
本気の人はごくわずか。

シャネルがナチスのスパイとなるきっかけとなった、
ナチスの大物スパイの13歳下のドイツ人男爵と出会ったのは、
シャネルが57歳のときだそうで、
そこから恋に落ちて付き合ったということです。
相手はシャネルの人脈を利用するために近付いてきた節があるようですが、
57歳で13歳下と付き合うって、すごい。
なんだろう、その執念。
しかし、これだけ数をこなしているのに、
シャネルだけに誠実な相手はごくわずかで、
ほとんどは奥さんがいるか、二股なのか、三股なのか、
ただ一人の人ではなかったとのこと。
ですから、彼女はいつも愛人で、
男性は決して妻とは別れず、最終的に妻のもとへ戻ります。

この本の中には少しはファッションについての記述も出てきます。
リトルブラックドレスはシャネルが考案したものだということ、
シンプルなデザインは、自分の孤児院での質素な暮らしから、
そしてスポーツウエアや男性のスタイルの要素を取り入れたのは、
貴族の愛人たちに影響されたからなど、
なぜあのデザインなのかというその理由が書いてあります。
それを読んでわかるのは、
シャネルこそが、現在のシンプルで、男服で、スポーツウエアや作業着を取り入れたスタイルの
オリジンであったということです。
彼女が婦人服に取り入れたのは、女性性の排除と貧乏くささ、だったのでした。

それだけではなく、利益のためなら人権を無視したり、
ナチスのスパイになったり、裁判でうその証言することも平気でやり、
フランスを裏切り、対独協力者となり、戦争時代もリッツで優雅に暮らし続けるなど、
その後、何年も続くファッション業界の闇の部分をすべて体現した人物である、
ということもわかります。

シャネルのこういった側面について描いた映画はありません。
まさに暗部です。

アパレル業界の根深い人権無視、アンフェアネスは、
こんなところから始まっているのかと思うと、なんだか暗澹たる思いです。
根っこが悪すぎた。

現在のシャネルのカール・ラガーフェルドのデザインは悪くはないけれど、
(彼が真っ黒な人物であるかどうかは知りませんが)
少なくとも、シャネルマークが入ったものを持つ気には、もうなれません。
なぜならそれは、私の大嫌いなレイシスト、そして法律を守らない者、
そして何よりも、裏切り者のシンボルであるから。

この事実を知って、
フランスの人はシャネルのことをどう思っているのでしょう。
それでもまだ尊敬するのかしら?
デザインと人物は別だと、考えるのでしょうか。

まあ、ファッション業界にもまっとうな人たちは少しはいるので、
これからはそちらを選びます。
愛人なんかには憧れない。
シャネルバッグはもういりません。

☆写真:原題は「SLEEPING WITH ENEMY」、こっちのほうがいいです。
シャネルは軍服の要素は取り入れていないようです。しゃれにならないから、やめたんだろうな。

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