2014年7月24日木曜日

ギャルソンを着た悪魔

どんな会社にも最低最悪の上司はいると思います。
いろいろなひどい上司の話を聞くと、
私だって、もっとすごい上司にひどい目に遭ったのよと、
ひどさ自慢をしたくなります。
彼女にされたことのトラウマで、
私は会社という存在が恐怖になり、
しばらくのあいだ、ビルを見ただけで吐き気がしていました。

彼女の年は30歳。
いつもコム・デ・ギャルソンを着ています。
あの会社の給料では買えない値段ですから、親が買ってくれていたのでしょう。
デザイナーのチーフですが、
チーフと言っても、外部委託としてある女性のデザイナーを立てていたので、
デザイン自体が彼女というわけではありません。
彼女がデザインするとしても、ダナ・キャランあたりを買ってきて、
これをそのまま作れと言います。
ただ、チーフなので仕事を進めるために彼女の決裁をもらわなければいけません。

真っ黒で少し縮れた感じの髪を背中の中央あたりまで伸ばし、
その真っ黒な髪に幾筋もの白髪が流れています。
肌はでこぼこで、なぜかいつも少し赤ら顔。
ノーメイクのその肌は、皮脂でてかてか光っています。
頬はこけ、黒目がちの目はときたま、興奮気味にぎらぎらします。
後にも先にも、こんな老けた三十歳は見たことがないのですが、
これは喫煙と飲酒の結果だと思われます。
ふっといなくなると休憩時間でもないのに喫煙室にこもり、
近付くと、残ったアルコールとニコチンのにおいが混ざって、何かが腐ったかのようなにおいです。
とてもじゃないですが、長時間、近寄っていられません。
コム・デ・ギャルソンの真っ黒なウールのコートにはニコチンのにおいが染み付いています。
20代だった私は、30歳になると、こんなにもひどいことになるものなのかと、
30歳になるのを恐れたものです。
(実際、全く恐れることはなかったのですが)

彼女は単なる平社員であるにもかかわらず、
お昼すぎに出社します。
(ちなみに小さな個人の会社ではありません。一部上場企業です)
自分がほかの人より半日遅れて出社するので、帰社するのも半日遅れ、
夜10時近くです。
そのため、部下たちは、彼女が帰るまで帰れません。
会社はもとから残業代を払わないので、そのブランドの部下たちが残されていても、
誰も文句を言いません。
昼過ぎに出てきたにもかかわらず、悪びれることもなく、
いつも不機嫌そうです。
不機嫌なだけならまだいいのですが、時たま、感情が暴発して、いきなり泣き叫んだりします。
会社の中です。
プライベートの場ではありません。
部下に対する敬意の気持ちなどないので、上司以外はすべて名前を呼び捨て。
そして、決裁の印鑑をお願いしても、必ず半日から1日はその書類を放っておきます。
自分は喫煙室にいるにもかかわらず。

彼女はそのブランド内で誰か1人ターゲットを決めて、
徹底的にいじめます。
決裁の印鑑をなかなか押さない、返事をしない、あからさまな無視。
そして、彼女が考え出したであろう恐ろしい方法は、
部下に仕事を命じ、残業させ、後ででき上がった仕事を、
片っ端からボツにしていくというものでした。
会社は残業代を払いません。社員がいくら無駄に仕事をして残っていても、
係長も課長も部長も、誰も何も言いません。
無給で働かされて、仕事を仕上げても、彼女の一言で、すべて無駄になります。
たぶん、最初からそうとわかって命じるのでしょう。
土曜日も休みではありませんので、土曜日の夜も仕事で潰されます。
部下のプライベートの時間を奪うことは、彼女にとって楽しみなのです。

そのブランドでは、半年おきに誰かが辞めます。
彼女のいじめ、今で言うパワー・ハラスメントに耐えきれず、辞めていくのです。
もちろん、私も彼女のパワー・ハラスメントの餌食になりました。

私は仕事が早いほうです。
それなのに当時、自分に与えられた量をこなすのに、同僚と同じぐらいの時間がかかっていました。
あるときふと、何かがおかしいと思い、みんなが帰った後、同僚の仕事量をチェックしたら、
私に割り振られた量の2分の1の量でした。
私は同僚の2倍の仕事を割り振られ、しかも、その中のある部分は、最終的に無駄であるとわかってやらされる仕事です。
あまりにアンフェアですが、もとから法律を守らない会社ですから、
フェアでないことが日常です。私の言い分など、聞いてくれません。

前例も見ていたし、上司は味方になってくれないとわかっていたので、
すぐ会社を辞めようとしたのですが、なぜか辞めさせてくれませんでした。
(その後、偽りの結婚退職作戦で辞めたのですが、辞めるのに1年を要しました)

この経験から、私は二度とアパレル会社に勤めることはできなくなりました。
怖くて近付くことさえできず、ぜんそくのような咳は出るし、吐き気がします。
その会社の商品が売っているデパートにも、怖くて入れなくなりました。

今、その彼女のことを考えてみると、
あの異常な行動は、アルコール依存症のせいではなかったかなと思います。
彼女はよく、昨晩はビールを12本飲んだであるとか、
休日は昼間からビールを飲んでいたなどと言っていました。
いつも不機嫌でいらいらしていて、暴言を吐き、ときたま感情が暴発。
私は彼女のボールペンで書かれた字の強い筆圧が変だと思っていたのですが、
あれは震えをおさえるために、必要以上に強くボールペンを握っていたせいかもしれません。
頬はこけ、目がぎらぎらしているのは、不眠のせいでしょう。
食べ物はあまり食べないで、昨晩も酒だけ飲んでいたと、
自分で言っていました。

彼女の友達も家族も、なぜ放っておいたのかわかりません。
単に知識がなかったからだけなのかもしれません。
しかしあれは、明らかに病気です。
肉体だけではなく、精神も蝕んでいたと思います。

そう考えると、彼女は同情すべき存在です。
誰かが助けるべき人です。
しかしだからといって、彼女のやり方は認められません。

今ごろ、彼女はどうしているでしょうか。
他人の不幸を生きがいとしていた彼女には、
それにふさわしい今があるでしょう。
それがこの世なのか、この世でないのかは、
知るよしもありませんが。

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