2014年6月7日土曜日

ノブレス・オブリージュ


ノブレス・オブリージュとは西洋の考え方で、
「高貴な者には責任が伴う」という意味です。
この考えは現在でも生きていて、
たとえば地位、名誉、財力のある人、あるいは団体は、
それ相応の行動を、それがない人たちに対して行うべきであると、
考えられています。

ノブレス・オブリージュについて考えるとき、
私が思い出すのは、
ジェーン・オースチンの「エマ」のもっとも山場の場面です。
貴族のエマは自分に縁結びの才能があると思いこみ、
いろいろと余計なことをやらかすのですが、
物語の最後のほうで調子にのって、
ミス・ベイツという経済的に恵まれない立場のハイ・ミスのことを、
ちょっとおしゃべりが過ぎるという理由でバカにして笑うのです。
そうすると、紳士のナイトリーさんというエマが本当に愛している相手から、
怒られます。
そのときの理由が、あなたは高貴な人なんだから、
貧しい人を笑ってはいけません、というものなのでした。
そして、エマは改心するのです。

この場面、ノブレス・オブリージュがわかっていなかったら、
意味がよくわかりません。
エマの視点に立っていると、笑って当然じゃない?なんて思うのですが、
そうではないのです。
貴族たるもの、貧しいものを笑ってはいけないし、
逆に支援するという義務があるのです。

このノブレス・オブリージュなのですが、
これがあるために、今も特にヨーロッパの有名人やお金持ち、
大きくなった企業などは、何らかの支援事業を行います。
これはファッション・ブランドも同じで、
アートやアーチストへの支援が多いです。
それは、利益を出す事業とは別に行います。
シャネルも若い音楽家を支援していると思います。
ファッション以外では、
ミュージシャンでアムネスティやオックスファムを支援している人たちも多いですし、
作家のJ.K.ローリングは資産の何割かを子供のための支援に使っています。

日本のファッション・ブランドが急激に衰退していったのは、
1つにはこのノブレス・オブリージュの問題があると思います。
90年代、日本のブランドの多くがパリにおいても成功し、
事業を拡大しました。
けれども、そこでどこかの支援を始めたという話は、
一つも聞きませんでした。
集めたお金はとにかく自分たちの事業の拡大、発展のために使っていました。

個人でも会社でも、ある程度お金のある人たちは、
それを自分だけのために使うのではなく、ほかのそうではない人たちに、
たとえば寄付などの形で使うことが当たり前なヨーロッパの文化の中で、
それを全くしないでいたら、それ以上の発展はないのでしょう。
(もちろんそれをマーケッティングの一環として行う企業もあります。
あそこ、とかね。でもやらないよりはまし)
お金だけを集めて、自分だけのために使う姿は、
それが人でも企業でも、
かえって卑しく下品に見えます。
自分の幸せや裕福ぶりを見せびらかすのでしたら、
それにふさわしい寄付なり、慈善事業なりをする必要があるのです。

お金や権力、地位があって、それをぎらぎら見せつけるだけで、
それに伴う義務や責任を放棄するのは卑しいこと、
そのことを理解していない日本のブランドは、
それ以上、ヨーロッパで認められることはないでしょう。

日本のファッションの衰退の原因は、デザインだけではなく、
ほかにもいろいろあるのだと思います。

☆「ファッション・レッスン」「インテグレート・ヒーリング」等、各種セッションのお知らせはこちらです。

☆動画:最近、これが好き。ヨーロッパの没落貴族のイメージ。そしてフィレンツェ。